保守主義の哲学---(第一回)小林よしのり氏の漫画『新天皇論』を検証してみよう [政治]
最初に、読者の皆様に吉報がある。
小林よしのり 氏の漫画『新天皇論』の虚構については、20世紀の日本国におけるエドマンド・バークの再来と言っても過言ではない、中川八洋 筑波大学名誉教授が近々、月刊誌『撃論』で学術的に完全論駁されるという情報を得ているので、読者の皆さまは是非、碩学 中川八洋先生の論駁に期待して頂きたいと思う。
さて、今回の私〔=ブログ作成者〕の一連のブログでは、「保守主義の父」エドマンド・バーク及び中川八洋先生の保守主義を信奉する自称エドマンド・バーク保守主義者である私〔=ブログ作成者〕の目線から、小林よしのり 氏が、『新天皇論』において用いている「すり替え理論」・「転倒語法(理論)」など、ルソー主義者やマルクス主義者の常套手段を指摘して漫画『新天皇論』の虚構を解き明かしてみたい。
ただし、『新天皇論』の内容すべてについて、虚構を解き明かす紙幅はないし、私〔=ブログ作成者〕のブログ上で『新天皇論』のすべての虚構に対して反駁している時間的余裕もない。優先して掲載すべき現在進行中の政治的・経済的課題が山積みだからである。
よって、上記のとおり『新天皇論』に対する学術的な完全反駁は中川八洋 筑波大学名誉教授の月刊誌『撃論』での論文に期待することとし、私〔=ブログ作成者〕のブログでは、論点を3~5点程度に絞り込んで、シリーズ数回に分割して『新天皇論』の内容の真偽の検証を試みるものである。
さて今回のシリーズ第1回目は、
『(1) 万世一系、男系男子皇統とは、歴史事実を貫通する“世襲の法”の成文化にすぎない』
という題目で解説したいと思う。
最初に、『明治皇室典範義解』を掲げておく。
明治皇室典範義解
第一章 皇位継承
第一絛 大日本國皇位は祖宗(そそう)ノ皇統(こうとう:天皇の血統)ニシテ男系男子之ヲ繼承ス
恭て按ずるに皇位の繼承は祖宗以來既に明訓あり。和氣淸痲呂還奏の言に曰く、「我國家開闢以來、君臣分定矣、臣を以て君と為す未だ之有らざる也、天之日嗣(ひつぎ)、必ず皇緒立てよ(注1)」と。
皇統は男系に限り女系の所出に及ばざるは皇家の成法なり。
上代獨り女系を取らざるのみならず、神武天皇より崇峻天皇に至るまで三十二世、曾て女帝を立つるの例あらず。
・・・是を以て上代既に不文の常典ありて易ふべからざるの家法を為したることを見るべし。
其の後、推古天皇以來皇后皇女即位の例なきに非ざるも、當時事情を推原するに、一時國に當り幼帝の歳長ずるを待ちて位を傳へたまはむとするの權宜に外ならず。
之を要するに、祖宗の常憲に非ず。而して終に後世の模範と為すべからざるなり。
本絛皇位の繼承を以て男系の男子に限り、而して又第二十一絛に於いて皇后皇女の攝政を掲ぐる者は、先王の遺意を紹述する者にして、苟も新例を創むるに有らざるなり。
(注1)續日本紀、巻三十「清麻呂行きて神宮に詣づ。大神託宣して曰く。我が國開闢より以來君臣定まりぬ。臣を以て君となすことは未だこれあらず。天つ日嗣は必ず皇緒(こうちょ:天皇の継嗣・皇嗣)を立てよ。無道の人は宜しく早く掃除すべし。清麻呂來り帰りて奏すること神教の如し」。
祖宗の皇統とは一系の正統を承る皇胤(こういん:天皇の血統)を言ふ。
而して和気清麻呂の所謂皇緒なる者と其の義解を同じくする者なり。
皇統にして、皇位を繼ぐは必ず一系に限る。
而して二三に分割すべからず。
天智天皇の言に曰く、「天雙(ふたつ)の日無く國二人の王なし(注2)」と。
故に後深草天皇以來數世の間、兩統(=持明院統と大覚寺統)互いに代わり、終に南北二朝あるを致ししは、皇家の變運にして、祖宗典憲の存する所に非ざるなり。
以上本絛の意義を約説するに、祖宗以來皇祚(こうそ:皇位)繼承の大義炳焉(へいえん:明白であること)として日星の如く萬世に亙りて易ふべからざる者、蓋し左の三大原則とす。
第一 皇祚(=皇位)を踐む(ふむ:践祚する・継承する)は皇胤(=皇統)に限る。
第二 皇祚(=皇位)を踐む(ふむ:践祚する・継承する)は男系(=父親の血統が皇統である系統のこと)に限る。
第三 皇祚は一系にして分裂すべからず。
(注2)日本書紀、巻二五、「天に雙の日無く、國に二の王無し。是の故に天下を天下を兼ね併せて、萬民を使ひたまふべきは、唯だ天皇のみ」。
(1) 万世一系、男系男子皇統とは、歴史事実を貫通する“世襲の法”の成文化にすぎない。
小林よしのり 氏は、漫画『新天皇論』82頁で次のように嘯いている。
『天皇の血筋は「男系」が一貫して尊重されたという誤った説がある。
「男尊女卑」感情が根底に流れる「万世一系」ならぬ「万世男系」説が、例えば「愛子様が天皇になられても、いいんじゃないの?」というような素朴な庶民感覚を封じている。
皇統は「万世男系」だったか?もちろんそんな事実は全くない』
―――――
→私〔=ブログ作成者〕の意見:
天皇の血統は、「男系」で一貫しているのが歴史事実であり、「男系」が「尊重」されたか、されなかったかという「平等イデオロギー」とは無関係である。
誰も動かせぬ万世一系、男系男子皇統の歴史事実
① 歴史上の女性天皇は以下の表の8名10代のみですべて男系女子である。
② その他の歴代天皇はすべて男系男子の皇統である。
③ ゆえに、女系の天皇はゼロであり、女系の皇子もゼロ、女系の皇女もゼロであった、という歴史事実も不動である。
これらは、歴史事実であるから、誰も動かすことはできない。
ここで特筆すべきことは、この「歴史事実」とは、現代の憲法学者や歴史学者などの学者の言説だけではなく、明治皇室典範の制定時及びそれ以前の江戸時代(さらにそれ以前の学者や万人らも含め)すべての時代の壁を乗り越えて継承されてきた見解であり、多くの史料に基づいて科学的に真実が確定したのであり、異論も異説も存在しないという事実である。
例えば、中野正志 氏(→マルキストで皇統廃止論者:中川八洋『女性天皇は皇室廃絶』徳間書店、22頁~参照)
の「万世一系は明治政府の構築したイデオロギーにすぎない」と同種の見解を小林よしのり 氏は主張する(→『新天皇論』253~255頁)が、巌垣松苗が記した江戸時代の『国史略』(巻第一、1826年)に、「歴正天皇 正統一系、亘万世而不革」との記述があり、『国史略』は、明治初頭、評判がよく版を重ねていた。
このように、1889年制定の大日本帝国憲法第一条の「万世一系」は明治政府がつくった新語でもないし新しい概念ではない。
それ以前から、万人がそうとしか理解できない周知の歴史事実を『国史略』にあった上記の四文字熟語に託して表現したにすぎない。
『日本書紀』にも「万世無窮」という語が存在するのは周知の事実であろう。
この異説や異論を唱えるのは、共産党系、あるは反共マルキスト、ポストモダン思想系などの天皇制廃止運動グループに属する者ばかりである。
これらの者の氏名や言説は、紙幅の都合上ここでは取り上げないが、その内容を知りたい者は、例えば中川八洋『女性天皇は皇室廃絶』徳間書店、15~75頁など中川先生の皇統に関する書籍を参照せよ。すべての疑問が解明するだろう。
ここでは、一例として、共産党系の天皇制廃止論者の「女帝論」の本心を現わす確信的な言説を知っておくだけで十分であろう(→中川八洋『女性天皇は皇室廃絶』徳間書店、16頁より)
―――――
奥平康弘は言う、
「ポピュラーな政治家たちに誘導されて典範第一条を改正して〈女帝〉容認策をかちとることに成功したとしよう。・・・この策は、天皇制のそもそもの正当性根拠であるところの〈萬世一系〉イデオロギーを内において浸蝕する因子を含んでいる」
「男系・男子により皇胤が乱れなく連綿と続いてきた(→私〔=ブログ作成者〕の意見:奥平は萬世一系の歴史事実をあっさりと肯定している)そのことに、蔽うべからざる亀裂が入ることになる。・・・〈萬世一系〉から外れた制度を容認する政策は、いかなる〈伝統的〉根拠も持ち得ない」
「女帝容認論者は、こうして〈伝統〉に反し〈萬世一系〉イデオロギーから外れたところで、かく新装なった天皇制を、従来とは全く違うやり方で正当化してみせなければならない」
「〈女帝〉容認策を盛り込もうとする政治勢力には、頼るべき伝統、それに対応した既存の正統のイデオロギー、のいっさいが欠けている。彼らは、日本国に独特な天皇制哲学を案出し、そのことについて〈新しい人びと〉の同意を調達しなければならない」
(→出典:奥平康弘「天皇の世継ぎ問題がはらむもの――〈萬世一系〉と〈女帝〉論をめぐって」『論座』2004年8月号、71~72頁)
これが、女系天皇論の真意の「化けの皮」の典型である。
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小林よしのり氏は、『新天皇論』83頁以降において持統天皇が天皇になられた「政治的な目的や感情」を持ち出して「男系」が「尊重されなかったから男系でない」と嘯き、さらに元正天皇が譲位の宣命で聖武天皇を「ワガコ」と呼び、聖武天皇が即位の宣命で元正天皇を「ミオヤ」と呼んだから「擬制を含む直系だ」とか「古代の皇位継承では、実際の血縁が、男系であっても、女系継承とみなした実例まであったのだ!!」と馬鹿げた小学生レベルの愚論を展開する(→『新天皇論』99頁)。
その論理の幼稚さと馬鹿らしさゆえに、反論する気すら失せるが、仮に「ワガコ」「ミオヤ」呼び合ったのが事実であるからといって、その事実と「男系の皇統という歴史事実」は一切無関係であることは小学生でも解ることであろう。
小林よしのり 氏の論理は例えば「私は自分のお母さんが嫌いだから、私はお母さんの子供ではない」などというダダをこねる「子供の屁理屈」と何ら変わるところがない。
だから私〔=ブログ作成者〕は「小学生レベルだ」と言っているのである。
「男系が尊重されなかったから、男系でない」とか「男系であっても、女系継承とみなした」などは小林よしのり 氏の妄想であり、幻想にすぎない。
どんなに屁理屈をこねても、歴史事実は唯一不変であって「聖武天皇は文武天皇の皇子であり、男系男子天皇である」ということでしかない。
『新天皇論』のこの箇所における論理展開は、ルソー主義、マルクス主義に特有の「すり替え理論」の典型である。
つまり、男系男子の定義をすり替えているのである。
そもそも「男系」とは小林よしのり本人が『新天皇論』112頁で述べているように、ある天皇Jを起点にして、「自分(=天皇J)の父の、父の、父の、・・・」と父系を遡って行けば、男系男子の皇統に辿りつくこと、つまり皇祖「神武天皇」にまで到達する場合、天皇Jは男系男子の皇統を継承(世襲)する者である、という歴史事実を指すことにすぎず、それ以外の何ものでもない。ましてやイデオロギーなどではない。
まず、この点を抑えておくことが極めて重要である。なぜなら、イデオロギーでないなら、そもそも議論の余地はないからである。
○ 万世一系、男系男子皇統とは歴史事実の集積の中に発見される皇祖皇宗の法(=遺訓)を示すことにすぎず、イデオロギーを意味するのではない。
男系男子の皇統とは、歴代天皇の個人の「意図」や「思想」や「感情」などとは全く無関係であり、歴史事実の連続つまり、ある時代において、それより過去の皇祖皇宗によって積み重ねられてきた歴史事実(=遺訓)を畏敬の念を持って省察・考察し、それらの歴史事実全体を貫通する普遍の“世襲の法”を発見し、それを言葉で成文化し「万世一系、男系男子の皇統」と表現しただけのことにすぎない。
すなわち、冒頭に掲げた『明治皇室典範』とは、その成立の時代において、その時代より過去の皇祖皇宗の遺訓としての“世襲の法(不文の法)”を歴史事実の連続の中に“発見”し成文化した法典にすぎない。
つまり、ここまでの私〔=ブログ作成者〕の解説を理解して頂いた、読者の皆さまは、小林よしのりが『新天皇論』256頁で吐く妄論である「男尊女卑という感情論」というイデオロギーが明治皇室典範(=歴史事実の積み重ねの中に発見された“法”を成文化した皇位継承法)の成立とは何ら無関係であることが容易に理解できるのではないか。
また、明治皇室典範の規定とは、歴史事実に基づいて、皇室典範の起草者らが発見した“皇位継承の法”の成文法典にすぎないことを理解すれば、小林よしのり 氏が『新天皇論』255頁で嘯く、
「日本の歴史上初めて、皇位継承者を男系男子に限ると明文化した旧皇室典範の規定は、歴史とも伝統とも無縁にできあがった。当初は、素直に歴史や伝統に学び、女帝も認めるべしとする意見が多かったにもかかわらず、時代の『男尊女卑』の感情から、あるいは甥を天皇にしたいという計算から、無理やり男系男子に限定されてしまったのである」
という主張が全くの出鱈目であるかが容易に解るであろう。
すなわち、“皇位継承の法”である皇室典範とは、過去の歴史事実の集積の中に発見するものであるから、「その時代」の「男尊女卑の感情」などとは無関係である。
最後に、万世一系、男系男子皇統を支持する者の呼称について。
私〔=ブログ作成者〕は、万世一系、男系男子皇統という“皇位継承の法”の遵守者でしかない。
したがって、小林よしのり 氏が【ごーまん、かまして言う】ところの穢れた造語、「男系主義・男系絶対主義・男系固執集団・男聖教・カルト、オカルト」などとは全く無縁の者であるが、小林よしのり 氏が、敢えて私〔=ブログ作成者〕のことを万世一系、男系男子皇統のイデオローグと決めつけたいのであれば、私〔=ブログ作成者〕を“法の遵守主義者”つまり、“エドマンド・バークの系譜にある保守(自由)主義者”あるいは、F・A・ハイエクのような旧ホイッグ主義者と正確に呼称して頂くのが最も適切であることを申し添えておく。
しかしながら、小林よしのり 氏が、純粋な“万世一系、男系男子の皇統支持者ら”を一括して「男系絶対主義者、オカルト」等々と決めつけて呼称するのは自身が皇統を全く理解できていない明白な証拠にすぎず、論理転倒した妄論・幻想にすぎない。
むしろ、過去の歴史事実の全体を「すり替え理論」や「転倒語法」を用いて歪曲する「女系天皇論者」こそ、「歴史歪曲・偽造」のイデオローグであって、そのイデオロギーの出自は、私〔=ブログ作成者〕がこれまで何度もブログ掲載してきたとおり、「ルソー主義」、「ヘーゲルの歴史主義、観念弁証法的歴史哲学」、「マルクス主義、唯物弁証法、唯物史観」、「ポストモダンや脱構築などの価値相対主義」の極左イデオロギーそのものにすぎない。
さて、皆さん『シリーズ第2回目』以降、「バーク哲学の神髄、続けて語ってよろしいか?そしてもっと知りたいですか?」
次回、シリーズ第2回目(→近日中に掲載予定)では、小林よしのり 氏の描く“明治皇室典範”の内容と“井上毅”の人間像について、氏の見解の真偽について解説したいと思っている。
ただし、若干程度、ブログの題目と内容を変更することもありうるので、その点はご了承頂きたい。
【平成23年5月18日掲載】
エドマンド・バーク保守主義者(神戸発)
読者の皆様へ
現在、出張中であり宿泊中のホテルのパソコンからコメントしています。
上記のブログの内容は、男系女子天皇については何も触れておらず、男系女子は皇統なのかわからないと言われる方もいるだろう。
しかし、上記の8名10代の男系女子天皇は男系男子天皇の中継ぎであって“皇位継承の法”ではない。
そのことは、明治皇室典範に明記されている。
さらに、上記のブログ中の
③ ゆえに、女系の天皇はゼロであり、女系の皇子もゼロ、女系の皇女もゼロであった、という歴史事実も不動である。
に大きな鍵(キー)が隠されている。
③と「万世一系、男系男子皇統の定義」をあわせ考えると、そこに皇祖皇宗大きな叡智が隠されている。
その叡智が、8人10代の男系女子天皇が「中継ぎ」であると断定させるのだ。
次回のブログの中で説明するけれども、読者の皆さんも興味があれば、一度考えて見て欲しい。
簡単なことである。
昔は「遺伝子」など誰も知らなかったのだから。
エドマンド・バーク保守主義者より読者の皆様へ
by ブログ管理人 (2011-05-18 13:00)
こんばんは、国史略の他にも小林よしのりのペテンを証明する資料があるので貼っておきますね。
次の論考も楽しみにしています。
慈円(天台座主-関白藤原忠通六男)の『愚管抄』巻七
「日本ノ国ノナライハ、国王種姓ノ人ナラヌスヂヲ国王ニハスマジト、神ノ代ヨリサダメタル国」
「コノ日本国ハ、初ヨリ王胤ハホカヘウツルコトナシ。臣下ノ家又サダメヲカレヌ。ソノマゝニテイカナル事イデクレドモ、ケフマデタガハズ‥‥」
北畠親房の『神皇正統記』(序論)
「彼国(天竺)の初の民主も、衆のためにえらびたてられしより相続せり。又世くだりては、その種姓もおほくほろぼされて、勢力あれば下劣の種も国主となり、あまさへ五天竺を統領するやからもありき。
震旦又ことみだりがはしき国なり。昔世すなほに道ただしかりし時も、賢をえらびてさづくるあとありしにより、一種をさだむる事なし。乱世になるまゝに、力をもちて国をあらそふ。かゝれば、民間より出でゝ位に居たるもあり、戎狄より起て国を奪へるも有。或は累世の臣として其君をしのぎ、つゐに譲をえたるもあり。伏犧氏の後、天子の氏姓をかへたる事三十六。乱のはなはだしさいふにたらざる者哉。
唯我国のみ天地ひらけし初より、今の世の今日に至まで、日嗣をうけ給ことよこしまならず。一種姓のなかにをきても、をのずと傍より伝給しすら、猶正にかへる道ありてぞたもちましましける。是併神明の御誓あらたにして、余国にことなるべきいはれなり」
吉田定房の奏状
「異朝は紹運の躰頗る中興多し。蓋し是れ異姓更に出ずる故のみ。本朝の刹利(国王)天祚一種(いっしょう)なるが故に、陵遅日に甚だしく、中興期(ご)なし」
『宋史』四九一(十世紀末に入宋した奝然の記録)
「東の奥州、黄金を産し、西の別島、白銀を出し、もって貢賦をなす。国王、王をもって姓となし、伝襲して今の国王に至ること六四世」
by 錬金術師 (2011-05-18 20:28)
錬金術師 殿
非常に強力なバックアップありがとうございます。
貴殿が、明確に示して下さったように、日本国の天皇(皇室)においては、
明治(旧)皇室典範
恭て按ずるに皇位の繼承は祖宗以來既に明訓あり。和氣淸痲呂還奏の言に曰く、
「我國家開闢以來、君臣分定矣、臣を以て君と為す未だ之有らざる也、天之日嗣(ひつぎ)、必ず皇緒立てよ(注1)」と。
(注1)續日本紀、巻三十
「清麻呂行きて神宮に詣づ。大神託宣して曰く。我が國開闢より以來君臣定まりぬ。臣を以て君となすことは未だこれあらず。天つ日嗣は必ず皇緒(こうちょ:天皇の継嗣・皇嗣)を立てよ。無道の人は宜しく早く掃除すべし。清麻呂來り帰りて奏すること神教の如し」。
と明記してあるように、万世一系、男系男子皇統とは、明治天皇、皇族、及び明治の元勲らが、彼らの時代に「新しく創造したもの」では決してなく、
慈円(天台座主-関白藤原忠通六男)の『愚管抄』巻七
北畠親房の『神皇正統記』(序論)
吉田定房の奏状
『宋史』四九一(十世紀末に入宋した奝然の記録)
などの史料に示されているように、
あらゆる時代の日本国の皇祖皇宗及び臣民(日本国民)が共に
「天皇の世襲の法」である
「万世一系、男系男子皇統」を
「護持せねばならない義務」を果たす
「弛むこと無き、血と汗の努力」を続けるによって
「ようやく護持され、現在に至っている」のだ、
という皇統の歴史事実と伝統の重み、偉大性を
「現在の日本国民」である我々の世代も、もう少し真剣に考えねばならぬ時が訪れているのだ、
という事実を悟るべきであろうと思います。
過去(=法・伝統・慣習/美徳)を敬い、遵守つつ継承し、現在という時代を漸進的進化の中に生き、将来の子孫へ誇り高き、美徳ある日本国を再生・復興し世襲する努力をすることが、
幸運にも日本国に生を受けた、我々、現在世代の日本国民の果たすべき義務だ、と言えるのでしょう。
私は、エドマンドバーク及び中川八洋及びF・A・ハイエクの著作を通じてそのように考えられるようになりました。
私の人生において、私が彼ら真正保守(自由)主義者から、「偉大な贈り物」を頂いたとに深く感謝しております。
エドマンド・バークを信奉する保守(自由)主義者
by BURKE_REVIVAL_IN_JAPAN (2011-05-18 21:45)
ここの所、盟友ブログに「1031」だの「うえ」とかが、コメ欄を荒らしに来てますが、こういう「おヒマで寂しんぼの上祐君」は無視が一番。私なぞ、「うえ」から、「国賊」「キムチカルト」呼ばわりされましから。其れはさておき、いよいよ今月中にも中川先生の新刊が出ます。乞う御期待。出張頑張って下さい。
by ストライクイーグル (2011-05-19 16:38)
はじめまして。
碌な検証もなしに敵対勢力を罵倒したり、保守論壇を鵜呑みにする偽者が多い中、多角的な視点から保守の真髄を極められる姿勢に感銘を受けるばかりです。
小林よしのりの女系天皇論に影響を与えた人物として、元東京大学史料編纂所教授たる酒井信彦氏が挙げられているそうですが、東大教授の肩書きの元にリテラシーの無い保守主義者が洗脳され、悪影響を与えかねないとして、検証を依頼したいと思い、書き込ませていただきました。
彼は街宣車に乗り回して愛国者のイメージダウンを図る朝鮮似非右翼にも勝るとも劣らぬ破壊工作員であると思います。
「男系天皇絶対論の危険性―女系容認こそ日本文明だ―」
http://sakainobuhiko.com/2006/10/post-9.html
細かい内容については今回、割愛させていただきますが、要約すると、「男系絶対主義はシナ・朝鮮の伝統だからそれを容認するのは中華思想を認め、卑屈である」と言うことだそうです。さらに、「ルーツを辿れば猿」であり、神話時代を切り捨てるなど、アナーキストの可能性が極めて高いです。
更に、「血統主義は孔子の家系より劣っている」と言っている点で、実は彼は過激な"中共崇拝教徒"であることが推測できます。
by 通りすがり (2011-06-01 13:56)
通りすがり 殿
貴重なご意見ありがとうございます。
紹介頂いた「愚ログ」の内容について、私の意見を簡単に述べておきます。
酒井信彦氏の最たる論理矛盾は、「皇室典範問題」を語ると言いながら、「皇祖神武天皇は神話的で歴史上の人物とは断定できない」とか「しかもその後の実在が確認できる天皇の歴代においても、男系の継承が絶対的に守られてきたのかどうかという事は、私は専門家ではないので具体的に議論するつもりはありませんが、それなりに異説もある」などと発言していることである。
この発言は「皇室典範」や「女系天皇」を論ずる以前に、「皇統を否定する」こと、すなわち「今上陛下及び皇室の正統性」への疑念あるいは否定から始めている。
ゆえに、発言の冒頭から「論理が完全に転倒」しており、酒井信彦氏は皇統の護持など全く興味はなく、その「女系天皇論」は「天皇制廃止論」にすぎないと断定できる。
皇祖皇宗の遺訓としての皇統に疑念を持つ、あるいは否定する人間が“現在及び将来皇統の悠久の繁栄”を考えることなど万が一にもできない。
さらに、酒井信彦氏の以下の愚論。
「二千六百年の間絶対不変の男系継承だ」とはいえないわけですが、ごく常識的に考えれば神武天皇というのは神話的な人物、神話的な存在です。日本の皇室の始祖となってはおりますが、明確な歴史上の人物であると断言する事は、かなり熱烈な皇室論者でも躊躇せざるを得ない筈です。そう断言するには、日本書紀や古事記に書いてある事が全て歴史的事実なのだと考えなければなりません。聖書に書いてある言葉が全て正しいという、聖書原理主義という考え方が欧米ではあるらしいですけれども、皇室典範問題の議論においては、実に安易に記紀原理主義が横行しているようです。」
近代合理主義的な現代学者・専門家らに特有の無知蒙昧・傲慢に過ぎる戯言である。
なぜなら、神武天皇を皇祖とする万世一系男系男子の皇統とは、現代(あるいは終戦後)日本人の(左翼)皇室学者や憲法学者が決定したものではない。
酒井信彦氏はここから既に大きな勘違いと思い上がりをしている。
そうではなくて、万世一系の男系男子の皇統とは、「古事記・日本書紀・續日本紀・神皇正統記・大日本史・国史略・明治皇室典範・・・」など様々な史料の編纂・成立に関わった多くの祖先と、これらの史料の成立期から現代に至る、日本国史上の公家及び武家の統治者や役人、天皇(皇室)、宮家・歴史学者、文学者、国学者・・・など「多数の偉大な武士・学者・官僚・・・」らの承認の下に過去から現在まで継承されてきた(=承認されてきた)という事実に基づいた“皇統・皇統系図”なのであって、現代の皇室学者や憲法学者などの憶測や疑問や躊躇ごとき類の攻撃によって、二千年以上に渡って祖先らが承認してきた日本国の万世一系男系男子の皇統が微動だにすることはない。
解りにくければ、次のように考えればよい。
酒井信彦氏をはじめとする、現代の歴史学者・皇室学者・憲法学者の中に、『神皇正統記』の著者である北畠親房や『日本楽府』『日本外史』の著者である頼山陽や『大日本史』の水戸光圀と水戸藩の皇統系図や『古事記伝』の著者で国学の大成者の本居宣長や『明治皇室典範』の主起草者であり、当時日本国の誰もが認めた碩学中の碩学であった井上毅らすべての偉人が“公認”してきた“皇統”を否定できる人物がいるのだろうか? いるわけがなかろう。
酒井信彦氏は、これらの過去の偉大な学者らの研究成果と成果の承認の世襲と継承を、現代の浅学の学者が否定しうると言っているのであるから正気の沙汰ではない。
酒井信彦氏は恥を知って、日本国の長い歴史の中における自らの存在の意味を謙虚に弁えるべきである。
男系男子皇統維持者とは、これら過去の偉大な学者らの見解を素直に継承し尊重する立場でしかなく、「安易な記紀原理主義」などでは決してない。
実は全く逆で酒井信彦氏こそ、明らかに「安易な記紀否定原理主義者」かつ「明白な皇統否定原理主義者」=「今上天皇(皇室)の正統性否定論者」つまり、「マルクス主義系の天皇廃止論者」であると自白しているようなものである。
ゆえに過去の皇統否定論者→今上陛下(皇室)の正統性の否定論者が将来の皇統の有り方としての「女系天皇論」を語るなど、笑止千万の暴論・愚論・出鱈目の「大矛盾」である。
私のブログの読者の皆さんはこのような見え透いたの論理矛盾の出鱈目マルクス主義者の虚偽・虚構などは瞬時に見抜かねばならない。
なお、男系皇統の支那文明(宗族制度)論、「Y遺伝子の遡り=猿・類人猿アルディー帰着のルソー主義論」等々については、本ブログ『新天皇論』シリーズで取り上げる予定なのでここでは省略させて頂きます。
by BURKE_REVIVAL_IN_JAPAN (2011-06-02 02:10)