保守主義の哲学---(第九回)小林よしのり氏の漫画『新天皇論』を検証してみよう [政治]
読者の皆さまには、いつも私〔=ブログ作成者〕の稚拙な小論をお読み頂き、深く御礼申し上げます。
中川八洋 筑波大学名誉教授の新刊(『小林よしのり「新天皇論」の禍毒』、オークラ出版)が平成23年6月30日に刊行されます。
中川八洋 筑波大学名誉教授は、英国のエドマンド・バークの保守(自由)主義哲学を正統に継承されている現代日本国における碩学中の碩学の政治哲学者です。
私〔=ブログ作成者〕は、ぜひ多くの日本国民に中川八洋 先生の新刊書(『小林よしのり「新天皇論」の禍毒』、オークラ出版)他多数の著作を読んで頂き、「真正の保守(自由)主義とは何か」を知り、学んで頂きたいと思っております。
さて、小林よしのり氏の漫画『新天皇論』の虚構を検証するシリーズ九回目は、これまでに私〔=ブログ作成者〕が触れなかった、漫画『新天皇論』の妄言・暴言を抜粋して、その虚偽・虚構を指摘し、封印・封殺しておきたいと思う。
ゆえに、(9)「天皇制廃止論者の虚偽・虚構の言説の集積箱、それが逆賊・小林よしのり『新天皇論』の本質である」
と題して、解説したいと思う。
① 日本国の伝統“君臣分定”を弁えぬ逆賊・小林よしのり
小林よしのりは、漫画『新天皇論』で次のように嘯いている。
『600年隔絶した人物の「男系」に頼ろうという案は、君と臣がしっかり分けられ、君と臣の信頼で成り立つ「国体」を破壊するものである。
万世一系は万世男系ではない!
皇位は直系で継ぐことを原則としなければならない』(『新天皇論』190頁)
→私〔=ブログ作成者〕の解説:
旧宮家の男系男子の方々は、すべて万世一系、男系男子の皇統(血統)を正しく世襲・継承されており、「600年隔絶」などしていない(→本シリーズ第五回参照)。
皇位継承における「直系and双系」主義、旧宮家に関する「600年も離れた、遠い血筋」、「バイパス手術」などという発想自体が意味不明の妄論・暴論である(→本シリーズ第五回~第八回参照)。
ただし、旧宮家の方々は、1947年10月14日に臣籍降下されており、現時点では皇位継承権はない。
ゆえに、臣籍降下時の「旧宮家の当主を含む嫡男系嫡出の男子子孫のすべて」に皇籍復帰して頂き、皇位を継承されるとすれば、即位された男系男子天皇は“万世一系、男系男子の皇統”と“正統な皇位継承権の保持”において、全く“正統”である。
ゆえに、日本国の天地開闢以来の万世一系、男系男子の皇統を世襲する天皇(皇室)
(→これは、日本国の国体であり、日本国民・日本民族の存在意義である)
を悠久に護持するためには、1947年10月14日に臣籍降下された時点での旧宮家(皇族)の当主を含む嫡男系嫡出の男子子孫すべてに皇籍復帰し、皇位継承権を回復する義務を果たして頂くしか方法はない。
北畠親房が『神皇正統記』で述べているとおり、天皇(皇室)、旧宮家、我々日本国民は「日本国に生を受けた」以上、“『正統』を遵守(保守)する義務”しか持たない(→本シリーズ第八回参照)。
“義務”は「権利」ではないから、選択する余地など無い。
これが“君臣分定”の真義である。
つまり、小林よしのりの以下の言説は究極の妄論・暴論である。
『小泉政権下で設置された「皇室典範に関する有識者会議」が平成17年に提出した報告書は、女系天皇容認、長子優先を結論として、「旧宮家」系の一般国民を皇族にする案は否定した。
これに対し「チャンネル桜」の討論で、慶応義塾大学教授・笠原英彦氏が貴重な発言をした。
政府関係者によると、旧皇族の男系男子の子孫の方に調査を行なった結果、保護者、ないしは本人から(皇族に)戻るという意思表示はなかった。
それを前提にして女系容認論をとらざるを得なかったという』(『新天皇論』154頁)
この妄言・暴論から結論できることは次の通り。
“『正統』を遵守(保守)する義務”が理解できず、狂人J・J・ルソーの「人民主権(国民主権)論」を振り回して、「『正統』の在り方を決定・変革できる」という途方もない「傲慢な勘違い」をしている「皇室典範に関する有識者会議」のメンバー及び笠原英彦、小林よしのりらは“君臣分定”を全く弁えぬ日本国の逆賊であり、国体の破壊者(=日本国民・日本民族の存在意義の破壊者)である。
国体の破壊者である逆賊らの「絶対意思」を命令した『報告書』(2005年11月)の内容は、“日本国法の支配”において、そのすべてが「一切無効」である。
皇室典範に関する有識者会議(=日本史上最大・最悪の天皇制廃止革命会議)のメンバーと参考人等については、私〔=ブログ作成者〕の過去のブログ「ホイッグ主義の蘇生による社会主義の撃退が日本救国の道である(15)
→ 専門家委員会への委任による“無法”な計画決定の危険性」を参照されたい。
この有識者会議が天皇制廃止革命会議であったことは、有識者会議の座長及び座長代理の二名の言説においても明白である。
【 有識者会議座長逆賊・吉川弘之】
「そこで、憲法に戻り、可能な道を探った。
憲法には女性天皇、女系天皇という道が用意されており、世襲継承という基本的な伝統にも合致し、かつ多くの国民の賛同を得られると判断した」
○ 引用著書:中川八洋『女性天皇は皇室廃絶』、徳間書店、45頁
● 言説の出典:『朝日新聞』2005年11月25日付、2面
「伝統とは、必ずしも不変のものではなく、各時代において選択〔=伝統の破壊〕されたものが伝統としてのこり、またそのような選択〔=破壊〕の積み重ねにより新たな伝統〔=皇統消滅〕が生まれる」
○ 引用著書:中川八洋『女性天皇は皇室廃絶』、徳間書店、70~71頁、〔 〕は中川八洋氏
● 言説の出典:有識者会議『報告書』、3頁(→有識者会議『報告書』の内容はすべて座長である吉川弘之の責任である)
「我々の世代が歴史をつくるという立場で検討したい」
○ 引用著書:中川八洋『女性天皇は皇室廃絶』、徳間書店、76頁
●言説の出典:『朝日新聞』2005年2月19日付
「皇族から意見を聞くことは憲法に反する」
「皇族から意見が発信されても会議の議論に反映することはない」
○ 引用著書:中川八洋『女性天皇は皇室廃絶』、徳間書店、77頁
● 言説の出典:『産経新聞』2005年10月6日付
【有識者会議座長代理 逆賊・園部逸夫(最高裁判所裁判官→外国人参政権に関する出鱈目判決の当事者)】
「私は女性天皇を認めることがもっともふさわしく、また必要なことと考えます」
「男系でないということをもって、それが象徴天皇制度にふさわしくないとか象徴天皇という地位に反するというようなことはないと考えております」
○ 引用著書:中川八洋『女性天皇は皇室廃絶』、徳間書店、79頁
● 言説の出典:2004年5月26日、参議院憲法調査会議事録、国会議事録検索システム3
「皇位の継承につき歴史・伝統を尊重する立場に立った場合、憲法第二条の世襲が女系による継承を含むか否かについて、・・・結論を言えば、女系を含むと解する」
○ 引用著書:中川八洋『女性天皇は皇室廃絶』、徳間書店、117~118頁
● 言説の出典:園部逸夫『皇室法概論』、第一法規、41頁(→この『皇室法概論』の出鱈目と内容の程度の低さは、中川八洋『悠仁天皇と皇室典範』、清流出版に詳細に解説してあるので参照されたい)
なお、“君臣分定”の真義である“『正統』を遵守(保守)する義務”とは、
皇祖皇宗の遺訓であり、『古事記』、『日本書紀』、『令義解』、『續日本紀』、『神皇正統記』、
幕末の山鹿素行、山崎闇齋の崎門の学の門人と水戸の藤田東湖や越前の橋本景岳ら、松下村塾(=長門の國、松下邑の塾)の吉田松陰とその門人、
薩摩の西郷南洲、幕府有司の川路聖謨、朝廷縉臣の英明第一と言われた三條實萬、明治の元勲や井上毅・・・、・・・など、あらゆる時代のすべての日本国民の代弁者らが、異口同音に唱え、遵守してきた歴史事実であり、日本国の“法”・“伝統”である。
このような国家の根本法であり国民の存在意義である国体(国憲・国法)、伝統とは、大東亜戦争終戦後わずか70年足らずの期間に存在した現代日本国民の「主権」概念によって変更・変革できるものではない。
そもそも、F・A・ハイエクが言うように“立憲主義の自由主義国家”における“法の支配”下においては、対外的な国家主権を除いて、内政上、天皇主権であれ、国民主権であれ「主権」など存在し得ない。
なぜなら、ハイエクが言うように、あらゆる権力が、“国法”=“憲法”の制限を超えることを許さない主義が“立憲主義”及び“法の支配”の本義だからである。
ゆえに本来、日本国は“立憲主義
(→憲法第97条:この憲法が日本国民に保障する権利・・・、第98条:この憲法は国の最高法規であって、その条規に反する・・・効力を有しない、と明記)”
であるから、日本国憲法の前文と第1条の条文の「主権」なる用語は立憲主義と矛盾する(→憲法が盾、主権が矛)のであるが、戦後教育を受けた日本国民が
日本国憲法 第一条
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく
の「国民主権」に固執するのであれば、その場合は「主権」は上記の“祖先たる日本国民のすべて”に附与されねばならないし、将来誕生する、もしくは将来成人になるだろう子孫らの「主権」も慎重に考慮されねばならない。
そう考えれば、万世一系、男系男子皇統の伝統は、圧倒的多数の日本国民の遵守義務の総意において護持されねばならないという結論に必ず帰着する。
ちなみに、大日本国憲法(→以後「明治憲法」と表記する)の条文に「主権」なる用語は一切存在しない。
明治憲法の絛規のどこにも「主権」なる用語が存在しないがゆえに、美濃部達吉(=常識的な立憲主義)の“天皇機関説”と上杉真吉(=偽装右翼のルソー狂信者)の「天皇主権説」の『天皇機関説論争』が生じ、後に『天皇機関説事件』が発生したのである。
「天皇主権」なる概念(=解釈)は明治憲法の中には匂いすらないのが事実である。
それどころか、明治憲法下の天皇が“立憲君主”であるべく、絛規において何重にも制限を加えているというのが事実である。
第四絛 天皇ハ國ノ元首ニシテ統治權ヲ總攬シ此ノ憲法ノ絛規ニヨリ之ヲ行フ(=立憲主義、立憲君主制)
第五絛 天皇ハ帝國議會ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ
第六絛 天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス(→第六絛の規定も当然第四絛、第五絛の規定の拘束を受け、天皇は独裁などできない)
第九絛 天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ臣民ノ幸福ヲ增進スル為ニ必要ナル命令ヲ發セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得ス
(→現在の日本国における中央省庁の省令・規則+天皇の勅令などであるが、法律の枠内に拘束される)
第十一絛から第十七絛までの天皇大権もすべて憲法の絛規の拘束を受ける。
第五十五絛 國務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ズ
凡テ法律勅令其ノ他ノ國務ニ關スル詔勅ハ國務大臣ノ副署ヲ要ス
第七十四絛 皇室典範ノ改正ハ帝國議會ノ議ヲ經ルヲ要セス
皇室典範ヲ以テ此ノ憲法ノ絛規ヲ變更スルコトヲ得ズ
(→明治憲法と明治皇室典範は二元的同格、消極的二元主義と言い、互いに相手を改正できない)
第七十五絛 憲法及皇室典範ハ摂政ヲ置クノ間之ヲ變更スルコトヲ得ス
第七十六絛 法律規則命令又ハ何等ノ名偁ヲ用ヰタルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ總テ遵由ノ効力ヲ発ス
さて、今回の「小林よしのり氏の漫画『新天皇論』を検証してみよう」シリーズ第九回はここまでとさせて頂きたいと思う。
今回のシリーズ第九回をシリーズ最終回にしようと考えていたが、第九回というのはどうも区切りが悪いので、次回シリーズ第十回において、
○ 今回の「小林よしのり氏の漫画『新天皇論』を検証してみよう」シリーズをブログ掲載した私〔=ブログ作成者〕の動機や実際に掲載して感じたこと
○ 辛抱強くブログを読み続けて頂いた読者の皆様への心からの謝意
○ 浅学な私〔=ブログ作成者〕の無謀な挑戦を蔭ながら支えて下さった真正保守(自由)主義グループの盟友らへの謝意
を表したあとがき的な短文を掲載して本シリーズを締めくくり、完了したいと思っている。
※ 文中の誤記 園田逸夫→園部逸夫、松本邑の塾→松下邑(まつもとむら)の塾(=松下村塾)に訂正しました。(28日21:00過ぎ)
【平成23年6月28日掲載】
エドマンド・バーク保守主義者(神戸発)
>これに対し「チャンネル桜」の討論で、慶応義塾大学教授・笠原英彦氏が貴重な発言をした。
政府関係者によると、旧皇族の男系男子の子孫の方に調査を行なった結果、保護者、ないしは本人から(皇族に)戻るという意思表示はなかった。
それを前提にして女系容認論をとらざるを得なかったという。
この発言は大嘘であると竹田恒泰氏が述べているので掲載しておきます(正論・平成22年10月号212頁)。
「笠原氏の述べた事の真偽は明らかである。筆者の生まれた竹田家も旧十一宮家の一つだが、筆者をはじめ、弟、父、従兄、伯父ら竹田家一族の男系男子に、政府からそのような問いかけがあった事実は無い。また、筆者の知る限り他の旧皇族一族にも問い合わせたところ、やはりそのような問いかけは無かったという。」
「月刊現代平成18年2月号」や「語られなかった皇族たちの真実(小学館文庫)のあとがき」に記されている竹田氏の証言によると、一族の圧力を受けやすい立場で言論活動をなさっているそうです。
この発言が虚偽であったとするなら、正論編集部に抗議が行く筈ですが、そのような事実は特に確認されていません。
更に、笠原証言の情報源は園部逸夫と某官僚の証言だそうですが、ご存知の通り、園部は有識者会議の一員です。
旧皇族に宮家再興案についての意見を本当に訊いていたならば、有識者会議の報告書にそれを記載しなかったのも解せません。
皇籍復帰の意思がありませんという客観的な根拠を出した方が、女系継承の導入なる反逆行為を正当化し易かった筈です。にも拘わらずそれをしていない。
以上2つの事実から推測すれば、竹田氏の証言は正しいと推測する事は可能です。サピオ掲載時に、小林がこの件で竹田氏を罵倒していたので、私の論考も記載しておきました。
by 錬金術師 (2011-06-28 20:30)