保守主義の哲学---(最終回)小林よしのり氏の漫画『新天皇論』を検証してみよう [政治]
読者の皆さまには、いつも私〔=ブログ作成者〕の稚拙な小論をお読み頂き、深く御礼申し上げます。
いよいよ本日、中川八洋 筑波大学名誉教授の新刊(『小林よしのり「新天皇論」の禍毒』、オークラ出版)が出版されます。
中川八洋 筑波大学名誉教授は、英国のエドマンド・バークの保守(自由)主義哲学を正統に継承されている現代日本国における碩学中の碩学の政治哲学者です。
私〔=ブログ作成者〕は、ぜひ多くの日本国民に中川八洋 先生の新刊書(『小林よしのり「新天皇論」の禍毒』、オークラ出版)他多数の著作を読んで頂き、「真正の保守(自由)主義とは何か」を知り、学んで頂きたいと思っております。
さて、逆賊・小林よしのりの漫画『新天皇論』の虚構を検証するシリーズ最終回は、前回第九回の続きとして、これまでに私〔=ブログ作成者〕が触れなかった、漫画『新天皇論』の妄言・暴言を幾つか抜粋して、その虚偽・虚構を指摘し、封印・封殺して本シリーズを終了したいと思う。
ゆえに、(10最終回)「天皇制廃止論者の虚偽・虚構の言説の集積箱、それが逆賊・小林よしのり『新天皇論』の本質である(其の二)」と題して、解説したいと思う。
シリーズ第九回 「①日本国の伝統“君臣分定”を弁えぬ逆賊 小林よしのり」からの続きである。
②「姓」のない天皇(皇室)の皇統は日本国の国是であり、「支那文明」とは全く異質の国体である。
逆賊・小林よしのりは、漫画『新天皇論』で次のように嘯いている。
『この「シナ文明・換骨奪胎説」は、わしも以前から繰り返してきた。
だからこそ、わしは女系天皇を公認する!
なぜなら、「男系絶対主義」とはシナ文明の家族制度そのものであり、日本の文明でも伝統でもないからだ!』(『新天皇論』226頁)
『皇室も特定の父親〔神武天皇〕の血統による親族集団である。
そして男子の跡継ぎがいない場合は、同じ宗族内の他の家(宮家)の男子を迎える。
女系継承は認めない。
似ているのは当然で、古代日本の豪族・貴族層が一夫多妻制によってシナ文明の男系主義の家族制度を輸入し、それが皇室にのみ、側室制度という一夫多妻制と共に残ったというのが天皇が「男系継承」である理由なのだ。
「天皇の男系継承は、美しい日本の伝統・文化である」
「男系天皇こそが日本の国体だ」とまで言う人がいるが、これはシナの風習である。
・・・本物の「男系絶対主義」では、たとえ男系女子だろうと、中継ぎだろうと、女帝は「ニセ天皇」でしかない!
女帝が入った時点で、皇統は断絶したことになるのだ!』(『新天皇論』228~230頁)
→私〔=ブログ作成者〕の解説:
ここまで馬鹿げた論理を展開されると批判するのも「うんざり」だが、妄論・暴論は消し去っておく必要がある。
(ⅰ) 日本国では天地開闢以来「君臣の分」定まり、「君」たる皇統には「姓」はない。
万世一系、男系男子の皇統は「姓」がないという事実において「シナ文明の家族制度」とは明確な一線が引かれ、シナの風習ではない。
「臣」の側において、シナの家族制度の影響を全く受けなかったとまでは言い切れないが、文明間に国交があれば文明間で相互に影響を及ぼし合うのは常識である。
重要なのは、シナと国交が在りながら、日本国の「君」である皇統は、「姓」を持たないことによってシナの宗族制度の影響を完全に排除し、“君臣の分”を常に明確にしてきたことである。
「姓」を持たずに万世一系、男系男子皇統を護持・継承してきた日本国の朝廷と、「姓」を持つシナの宗族制度によって幾度も「易姓革命」が繰り返されてきた「分断の連続のシナ王朝(最近では「支那共産党という新独裁王朝」)と比較すれば、文明の相違は明白ではないか。
北畠親房『神皇正統記』に曰く、
「三韓(さんかん:新羅、百濟、高麗)震旦(しんだん:支那)に通じてより以來(このかた)、異國の人おほく此國に歸化(きくわ)して、秦のすゑ(=末裔)、漢のすゑ、高麗百濟(かうらいはくさい)の種、それならぬ蕃人(はんじん)の子孫(しそん)もきたりて、神皇(じんわう)の御(み)すゑと混亂(こんらん)せしによりて姓氏錄(しやうしろく)と云(いふ)文(ふみ)をつくられき。
それも人民(にんみん:臣)にとりてのことなるべし」(『神皇正統記』岩波書店、62頁)
(ⅱ) 皇祖皇宗の遺訓、天皇の万世一系、男系男子皇統は、日本国天地開闢以来の日本の国是(伝統)である。
逆賊・小林よしのりは、
『「天皇の男系継承は、美しい日本の伝統・文化である」、「男系天皇こそが日本の国体だ」とまで言う人がいる』
とまで述べている。
賤しい逆賊の戯言である。
逆賊・小林よしのりの「言う人」には当然、シリーズ第九回で私〔=ブログ作成者〕が述べた、皇祖皇宗、『古事記』、『日本書紀』、『令義解』、『續日本紀』『神皇正統記』、幕末の山鹿素行、山崎闇齋の崎門の学の門人と水戸の藤田東湖や越前の橋本景岳ら、松下村塾(=長門の國、松下邑の塾)の吉田松陰とその門人、薩摩の西郷南洲、幕府有司の川路聖謨、朝廷縉臣の英明第一と言われた三條實萬、明治の元勲や井上毅・・・などの日本国の碩学中の碩学の祖先らも含まれている。
逆賊・小林よしのりは、これらの人物が異口同音に唱え継承してきた『天皇の万世一系、男系男子皇統論』がすべて誤謬であったと論駁せねばならない。
また、逆賊・小林よしのりは漫画『新天皇論』の前置きである、漫画『天皇論』375頁において次のよう嘯いている。
『・・・元々、天照大神は女性神である。ならば日本の天皇は女系だったと考えることができる(→?)』
さらに『新天皇論』321~322頁では、次のように続ける。
『正統とは、血統は天照大神の血脈を受け、精神は天照大神の神意をうけたことを言うのだ!
田中卓先生も、重要なのは『天常無窮の神勅』であり、「吾が子孫」が国体の根本だと仰っている。
女神である天照大神の血脈と神意を受けることが「正統」である以上、皇統から女系を排除する理由はない(→?)』
逆賊・小林よしのりは、女神である天照大神の血脈と神意を女系天皇論の根拠に据え、あたかも天照大神を尊重・崇拝している芝居をする。
だが、「逆賊・小林よしのり、何をかいわんや」である。
逆賊・小林よしのりこそ、漫画『新天皇論』に描いた虚偽・虚構によって多くの日本国民を欺く行為をすることによって、天照大神の“三種の神器につきたる神勅(=正直・慈悲・智慧)”のすべてを完全無視して、天照大神を最大限に冒瀆しているではないか!
つまり、逆賊・小林よしのりとは、天照大神に対する畏怖の念も天皇(皇室)に対する畏敬の念も日本国の祖先に対する尊崇の念のかけらも抱いておらず、無神論者よろしく天照大神を「女系天皇論・女性天皇論」肯定のために悪用し、最終的に両者とも(→天神〈神道〉も皇統も両者同時に)破壊することを目的としている。
このように分析すれば、「天照大神が女性神であるから、日本の天皇は女系だった」のような言説を根拠とする「女系天皇・女性天皇」容認論とは、日本共産党の「コミンテルン32年テーゼ」の「天皇制の廃止」と「政教分離を利用した神道の撲滅」を忠実に踏襲した天皇制廃止運動の手段に過ぎないという本質が明白になる。
また、天照大神の「血脈」などは、ハイエクの言う「神人同性同形論」という「デカルト的設計主義的合理主義」の思想から発している。
『古事記』の「上巻」や『日本書紀』の「神代」における日本神話の神々と日本国の天皇(皇室)及び日本国民とは日本神話における“美徳の精神”・“高貴なる精神”において繋がっているのであって、物質的に直接の繋がりを持つことを意味しない。
“日本神話”とは、日本国固有の天皇(皇室)と日本国民の“美徳と高貴の精神”の“源泉”である。
“天地開闢の初め以来の万世一系、男系男子皇統”とは、日本神話を源泉とする“美徳と高貴の精神”を(現実の)日本国の治世において最初に体現されたのが初代神武天皇であり、神武天皇以後、約二千数百年間を経て現在に至るすべての日本国民が、美徳と高貴による治世を体現されんとする男系男子皇統を途絶えることなく護持し続けてきた歴史事実を言うのであって、このような日本神話(→後に神仏習合して仏法も加わるのだが)と皇統と日本国民の三位一体の不変の存在価値の伝統が、日本国の誇るべき“国体・国憲・国法”なのである。
ゆえに、この三位一体の“国体・国憲・国法”を変革・革新・革命する時、我々日本国民の民族固有の存在意義は白紙となり、国民精神は頽廃し、国民は名誉と誇りを喪失した根無し草の市民に為り、国家は廃墟と化して滅亡に至る。
③「易姓革命」とは「ルソー主義・ジャコバンのフランス暴力革命」、「マルクス・レーニン主義のロシア暴力革命」の代替手段としての「国体破壊革命」にすぎない。
逆賊・小林よしのりは、漫画『新天皇論』で次のように嘯いている。
『第二にこれが重要だが、日本では「姓」は天皇が下賜するものとされ、天皇には氏も姓もない!
・・・もともと天皇に「姓」はないのだから、「易姓革命」など起こらない。
まして(明治)4年以降はすべての日本人から「姓」がなくなったのだから、なおのことである。
・・・それでも今なおシナ文明の残滓でしかない「男系継承」にこだわり、とっくに日本人に「姓」はなくなっているのに、「姓」と「苗字」を混同してまで「易姓革命が起きるぞ!」と言っている連中の精神は「シナ文明の奴隷」みたいなものだ!』(『新天皇論』239~240頁)
→私〔=ブログ作成者〕の解説:
逆賊・小林よしのりは漫画『新天皇論』(233~240頁)において延々と「姓」、「氏」、「苗字」の相違について語っているが、日本国の皇統には「姓」も「氏」も「苗字」もないことが伝統であるから、そもそもこれらの用語の定義の説明など無用の長物であり、意味を為さない。
問題なのは、『天皇に「姓」はないのだから、「易姓革命」など起こらない』という天皇制廃止論者の詭弁である。
私〔=ブログ作成者〕は、以前に数学史上「ゼロ(0)」の概念の発見が極めて重要な発見であったことに触れた(→本シリーズ第3回参照)けれども、この易姓革命の場合はゼロ(0)を壱(1)に変える(→「無」から「有」)場合の方が壱(1)を弐(2)に変える(→「有」から「有」)場合よりもその変化の意味が重大となるケースである。
つまり日本国の皇統においては「易姓革命」という用語に「姓Gの王朝が姓Sの王朝に取って代わる」という意味だけでなく、「姓無しの正統な皇統に、いかがわしい姓Kが附与される」という意味も含まれる、ということに十分に注意しなければならない。
天皇制廃止論者の唱える「女系天皇・女性天皇」容認論とは、この「易姓革命」に照準を絞った日本国の天皇(皇室)の消滅論(=国体の破壊論)にすぎないのである。
さて、エドマンド・バークを信奉する保守主義者である私〔=ブログ作成者〕は、「小林よしのり氏の漫画『新天皇論』を検証してみよう」シリーズ全10回に渡って、逆賊・小林よしのりが、天皇制破壊論者である左翼・極左系・偽装保守系の天皇(皇室)学の似非学者・自称専門家・門外漢の論説を集積して漫画として描いたにすぎない『新天皇論』の妄言・暴論による虚偽・虚構に正面から対峙し、浅学の微力ではありながらも、日本国の万世一系、男系男子皇統の正統と、現代日本国民も過去の祖先がそうしたように、皇統の正統を世襲・継承せねばならぬ義務について、読者の皆さまを含む多くの日本国民に理解して頂くために、図表や古典や明治皇室典範などを引用しながら、私〔=ブログ作成者〕なりに可能な限り解り易く解説するように心掛けて、『新天皇論』への反論・反駁を試みたつもりである。
私〔=ブログ作成者〕としては、逆賊・小林よしのりの漫画『新天皇論』の言説ついて反駁したい点はまだまだ山ほどある。
特に、臣籍降下された当時の当主を含む旧宮家の嫡男系嫡出の男子子孫の皇籍復帰と皇位継承権の回復のための「現行・皇室典範」の早期改正(=旧典範への復元)問題と“皇族會議”ならぬ「皇室会議」の在り方及び皇室典範改正(=旧典範への復元)に係る有識者会議という(自称)専門家委員会の在り方の問題については、本来、触れたかったが、時間と紙幅の都合上割愛せざるを得なかった。
しかしながら、20・21世紀日本国におけるエドマンド・バークの再来と言っても全く過言ではない、碩学の中の碩学の政治哲学者である中川八洋 筑波大学名誉教授の著書『小林よしのり「新天皇論」の禍毒』が、いよいよ本日平成23年6月30日(木)に発売開始されるから、徹底的な学術的論駁は、中川八洋先生のこの著書に期待することとし、この「小林よしのり氏の漫画『新天皇論』を検証してみよう」シリーズ全十回は、今回をもって終了とさせて頂きたいと思う。
なお、最後になりましたが、
「小林よしのり氏の漫画『新天皇論』を検証してみよう」シリーズ最終回にあたり、シリーズ連載中を通じて私〔=ブログ作成者〕のブログの読者の皆さまと多くの初来訪者の皆さまが、拙ブログに興味を示してアクセス頂き、毎回お決まりの纏まりのない長文であるにも関わらず、我慢強く、寛大な心で拙ブログを読み続けてくださったことが、私〔=ブログ作成者〕がこのシリーズ全10回を書き続けることができた大きな原動力となりました。
また、私〔=ブログ作成者〕のブログを応援して下さる真正保守(自由)主義グループの盟友たち、私〔=ブログ作成者〕の稚拙なブログに対し丁寧かつ貴重な智慧のコメントを御教示くださった方々の支えなくしてこのブログシリーズ全十回を書き終えることは出来なかったと思っております。
上記のすべての方々に対し、深く感謝の意を表しますとともに、心より厚く御礼申し上げまして、私〔=ブログ作成者〕のブログ「小林よしのり氏の漫画『新天皇論』を検証してみよう」シリーズ全10回を終了させて頂きます。
読者の皆さま、御清聴ありがとうございました。
なお、次回からは、ブログ内容を現在の政治問題に戻して、反日・極左(詐欺師)菅直人民主党政権批判と真正保守(自由)主義哲学の解説に努めて参る所存ですので、読者の皆様におかれましては、今後も本ブログと末永くお付き合い下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。
【平成23年6月30日AM2:00】
祝・中川八洋『小林よしのり「新天皇論」の禍毒』発売
エドマンド・バーク保守主義者(神戸発)