2023年10月19日:F・A・ハイエク曰く「 裁判官は新秩序の創始者ではなく、既存秩序の機能の維持、改善に努める召使いである 。」最高裁の裁判官はこのことを肝に銘じるべき。 [政治]

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〔Ⅰ〕生物学的(科学的・客観的〕性別

すべての生物(特に人類が属する哺乳類)の生物学的性別(雌雄、男女)は出生時に決定され、一生涯不変である(自然の摂理、不動の科学的事実である)。社会状況の変化によって決して変動するものではない

 人間の生まれながらの、つまり、生物学的・医学的な、性別(sex)は、男女の2区分に峻別される。生物学の分類においては、有性生殖の生物の(例えば哺乳類の)、雄/雌(男性/女性)は、次のように明確に定義される

  “ 精子(より小さな配偶子)を生産する個体が雄/男性であり、卵子(より大きな配偶子)を生産する個体が雌/女性であると定義される。

 雄/雌(男性/女性)の決定的な違いは、体の大きさの違いでも、生殖器の形の違いでもなく、生産する配偶子が大きいか小さいかということにある
  -----長谷川寿一・長谷川眞理子『進化と人間行動』、東京大学出版会、187頁。

  “ 人間だけでなく、哺乳類だけでなく、すべての動物、植物、何にでもあてはまる、雄と雌の定義は何でしょう?

それは、卵を作るか、精子をつくるかの違いです卵を作る個体を雌、精子を作る個体を雄と呼ぶのです。では、卵と精子の違いは何でしょう?それは大きさの違いです。卵は、遺伝情報のほかに栄養をつけているから大きく、精子は遺伝情報だけで栄養など持っていないから小さいのです。

・・・栄養をたくさん持ってくることに特化した卵を作る個体と、早く動いて相手を見つけることに特化した精子を作る個体とが生じたのです。これが、この世に「雌」と「雄」のできた理由であり、「雌」と「雄」しかいない理由なのでしょう。
   -----長谷川眞理子『オスとメス=性の不思議』、講談社現代新書、31頁、36頁)

  つまり、生物学的(客観的・科学的)分類では、哺乳類に属する人間の場合、「卵を作る者=子供を出産し得る者」が「女性」であり、「それ以外は男性」である。この性別区分は、いかなる急激な人間社会の状況変化が起ころうとも不変であり、少なくとも、人類誕生以来、現在までは何も変わっていない。また、生物学的な男女の区分の基礎は「生殖機能」(身体的特徴としては生殖器官)にあることがわかる


〔Ⅱ〕性同一性障害者特例法第2条、第3条の規定

平成十五年法律第百十一号

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律

(趣旨)

第一条 この法律は、性同一性障害者に関する法令上の性別の取扱いの特例について定めるものとする。

(定義)

第二条 この法律において「性同一性障害者」とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう。

(性別の取扱いの変更の審判)

第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。

一 十八歳以上であること。

二 現に婚姻をしていないこと。

三 現に未成年の子がいないこと。

四 生殖腺せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること

五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

2 前項の請求をするには、同項の性同一性障害者に係る前条の診断の結果並びに治療の経過及び結果その他の厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書を提出しなければならない。

(性別の取扱いの変更の審判を受けた者に関する法令上の取扱い)

第四条 性別の取扱いの変更の審判を受けた者は、民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令の規定の適用については、法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなす。

2 前項の規定は、法律に別段の定めがある場合を除き、性別の取扱いの変更の審判前に生じた身分関係及び権利義務に影響を及ぼすものではない。

  つまり、第3条1項4号の規定(静岡家裁「本件規定」)は、第2条の「自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者」という性同一性障害者の定義を踏まえた規定。
  また、同法第2条では「生物学的には性別が明らかである」として生物学的性別を男女の2区分とすることを(あるいは、それを認めること)を前提としている。なぜなら、そう認識しない限り、「心身の性別違和」に悩み苦しむことはないと考えられるからである。それ故、生物学的な男女区分を否定したり、生物学的真理を主張することを差別であるとみなすような「トランスジェンダー」は同法第二条の定義に該当する「性同一性障害者」とみなすことはできない。
  さらに、

実際にも、性同一性障害特例法を守りたい当事者の集まりである「性同一性障害特例法を守る会」は次のように主張している。

「性同一性障害特例法を守る会」のTweet「X」より、コピーを抜粋(但し、アンダーライン、赤丸:私)。
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  また、こうも主張している。

実際私たち「性同一性障害者」は、自ら望んで手術を受ける人々です。自分の性器に対する違和、嫌悪から、進んでそれを手術という手段によって解消しようとする者です。

  >けして「戸籍の性別を変えたいから、手術する」というようなものではありませんし、戸籍変更が「手術のご褒美」であるかのような言説には「当事者の心を侮辱するもの」だと反論・抗議したいです。

  つまり、 特例法第2条の定義する「性同一性障害者が、自らの意思によって、同法第3条1項4号の規定の性別適合手術を受けること」は、WHO(世界保健機関)などの国連5機関が2014年5月30日に出した「強制・強要された、または不本意な断種手術の廃絶を求める共同声明」で述べられているような「強制避妊」や「強制断種」には当たらないと解すべき。  

 さらに言えば、法的な(=戸籍机上の)性別変更はしたいが、特例法第3条1項4号の性別適合手術はしたくないという場合には、当該人物が同法第2条の「性同一性障害者」に該当するのか否かの方が、精査されるべきであろう。
  なぜならば、「性同一性障害特例法を守る会」が述べているように、性同一性障害者の抱く身体と心の性の間の性別違和は、身体的には「生殖機能/生殖器官」の違和にあると考えられるからである。


〔Ⅲ〕自然法上の自然権においてさえ、想定されていない「人間の権利(人権)」(=性自認のみによる法的な性別変更権)などあり得ない。

  2007年3月2日に承認された国連人権理事会のジョグジャカルタ原則で述べられているような思想、即ち、
  「性同一性の法的承認、つまり法的性別変更の条件にホルモン療法や不妊手術や性別適合手術といった医学的治療は必須とされない。結婚している、あるいは親であるといった社会的身分もその当事者の性同一性の法的承認つまり法的性別変更を妨げない万人は性的指向や性同一性を否定したり、揉み消したり、抑圧するよう圧力をかけられない。

  という思想や、

  WHO(世界保健機関)などの国連5機関が2014年5月30日に出した「強制・強要された、または不本意な断種手術の廃絶を求める共同声明」で述べられているような内容、即ち、  

  「トランスジェンダーやインターセックスの人々が、希望するジェンダーに適合する出生証明書やその他の法的書類を手に入れるために断種手術を要件とすることは身体の完全性・自己決定の自由・人間の尊厳に反する人権侵害である」

  という思想

  などは、

  “すべての生物(特に人類が属する哺乳類)の生物学的性別(雌雄、男女)は出生時に決定され、一生涯不変である(自然の摂理、不動の科学的事実である)。社会状況の変化によって決して変動するものではない。

  という生物学的(科学的・客観的)事実と相容れない(矛盾している)

  また、日本学術会議・法学委員会・社会と教育におけるLGBTIの権利保障分科会が、令和2年(2020年)9月23日に公表した提言『性的マイノリティの権利保障をめざして(Ⅱ) ―トランスジェンダーの尊厳を保障するための法整備に向けてー』では、次のような提言をしているが、これも「生物学的(科学的・客観的)事実」と全く相容れない(矛盾する)提言である。

   曰く、

  “本提言では、①「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の廃止とそれに代わる新法(「性別記載変更法(仮称)」)の制定、②多様な分野で生じている人権侵害を防止するための性的マイノリティに特化した人権保障法の制定と実効性の高い政策の実施を求める。②の制定を通して、最終的には、③あらゆる差別の解消を目指す包括的な差別解消法の成立を展望したい。

  “日本で唯一のLGBT法である「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(2003年)は、身体変更や生殖腺切除を法的性別変更の必須要件と定めており、2010年代から急速に進展した国連の人権基準や法改正の国際的動向に即していない。「性同一性障害」という用語ももはや国際的に使われていない。トランスジェンダーは数ある性の個性の一つであって、「障がい」ではないからである。

  “提言1トランスジェンダーの権利保障のために、国際人権基準に照らして、性同一性障害者特例法に代わる性別記載の変更手続に係る新法の成立が必須である。国会議員あるいは内閣府による速やかな発議を経て、立法府での迅速な法律制定を求めたい

  トランスジェンダーの人権保障のためには、本人の性自認のあり方に焦点をあてる「人権モデル」に則った性別変更手続の保障が必須である。現行特例法は、「性同一性障害」(2019年WHO総会で「国際疾病分類」からの削除を決定)という「精神疾患」の診断・治療に主眼を置く「医学モデル」に立脚しており、速やかに廃止されるべきである。特例法に代わる新法は「性別記載の変更手続に関する法律(仮称)」とし、国際人権基準に則した形での性別変更手続の簡素化が求められる。以上の見地から、国会議員あるいは内閣府(法務省による法案作成)による速やかな発議と立法府での迅速な法律制定を求めたい。

  つまり、端的に言えば、国連人権理事会の原則や、国連5機関の共同声明や、日本学術会議の提言はどれも、

 「万人は、自らの(=主観的な)性自認や性的指向のみによって、速やかに、法的な性別変更を承認されなければならない。それが人間の権利(人権)だ!否定したり、抑圧したりするのは人権侵害だ!

  というものであることがわかる。
  すなわち、それが本人の性自認のあり方に焦点をあてる「人権モデル」に則った性別変更手続の保障であるというのだ。

  つまり、これは「性同一性障害者特例法 第2条で定義される「性同一性障害者」のみに関する主張ではないため、日本学術会議は上記の提言において、はっきりと特例法の廃止と、それに代わる新法-----トランスジェンダーの性自認のみによる、速やかな法的(=戸籍上の)性別変更が可能な法律-----の制定を提言しているのである。

  そして、明らかに、現在最高裁に提訴されている、 性同一性障害者特例法の第3条1項4号の規定の撤廃問題の本質は、これらの原則、声明、提言の推進と圧力、つまり、「特例法第2条の性同一性障害者の定義に該当しない、トランスジェンダーの性自認のみによる戸籍上の性別変更も、無条件に認めよ!」という圧力に、関連している(起源がある)。

  しかしながら、性同一性障害者とは、この「生物学的な男女の2区分」を確信するがゆえに「強度な心身の性別違和」を抱く(違和に悩む・苦しむ)人々であって、「(事実として存在する)生物学的な男女の2区分などない!そのような思想(否、事実の認識)は、差別思想だ!」などと主張する「トランスジェンダー」とは、別種(異質)の人びとであることは、自明である。
  つまり、敢えて言えば、生物学的性別の雌雄・男女2区分という客観的事実の存在を正しく認識している(が故に、心身の性別違和に苦しむ)性同一性障害者は、認識的に「正常」、そうでないトランスジェンダーは認識的に「異常」と言えるかもしれない。
  つまり、両者は、似て非なるもの決して混同して扱ってよいものではない

(参  考)
  ⇒2023年10月16日:(独り言)静岡家裁決定に関して疑問(orミステリ)に思うことのまとめ(メモ)。 : blog(参考資料集リンク) 

(補  足)
  先般の静岡家裁の審判(判決)書p11において、裁判所は次のように述べている。
  “上記ガイドラインの改訂から17年余りが経過し、医学的には、上記改訂後のガイドラインに基づく治療方法は既に確立したものということができ医療界において、安易に性同一性障害の診断がされていることをうかがわせる証拠はない
  つまり、この言説は、戸籍上の性別変更の要件から「性別適合手術」を外した場合、患者が「性同一性障害者」であるか、そうではない「トランスジェンダー」であるかの判断は、医療界の診断(=手術なしの診断書の発行)のみに委ねられることになるが、治療法は確立しているので、医療界の診断(書)が間違うとは考えられず、診断を信じることができる、と医療界にお墨付きを与えている形である。
  が、実態は、果たしてそうなのか?
  不用意に裁判所が、性別適合手術という根拠に代わるものとして、医療界の診断書のみに、このようなお墨付きを与えてよいものだろうか?
  という疑問に対する補足資料である。


☆ 著書(paperback版)出版のお知らせ

  ブログ読者の皆様へ

  いつもお世話になり、ありがとうございます。

先般、エドマンド・バーク『フランス革命の省察』(市村賢太郎訳)をkindleにて出版したところですが、この度、その「紙書籍版(paperback版)」をKDPより出版する運びとなりました。

A5判・418頁・背表紙幅24mm

  Amazon.co.jpにて、20231023日(月)発売予定

  ※ KDPの紙書籍版(paperback版)制度には「予約注文」制度はありません。

税込価格:2860

※ 個人出版のため、どうしても書籍印刷代などの費用がかかり、少し価格高となります。申し訳ありません。が、価格に対する書籍内容の質と量は保証いたします(紙書籍までは必要ないという方は、内容は全く同じですので、kindle書籍:1250円の方を購読願います)。

下記写真は、印刷確認用「試し刷り版」の写真です(書斎にて個人撮影)。

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本書は、エドマンド・バーク『フランス革命の省察』を私が、2年弱の年月をかけて、翻訳推敲を重ねに重ねて、バークの意図している内容を“正しく”邦訳したものです(⇒“正しく”という表現が事実であるか否かは、英語原文および他のすべての『省察』の邦訳書を読み比べて、読者諸氏に判断していただきたいと思いますが、本邦訳書は、私がそれほどの自負をもって、現在および将来の日本国・日本国民の利益のために、世に送り出した著書です。

バーク哲学は「保守主義の理論」であるので、各種メディアやSNSで言論活動する保守派の人々にとっては、自己の言論の「理論武装化」に大いに役立ちます。

それゆえ、是非多くの方々に読んで頂きたいと思います。

“ That, when the choice is well made , it strengthens, instead of oppressing our intellect . That he who calls in the aid of an equal understanding doubles his own. He who profits of a superior understanding raises his powers to a level with the height of the superior understanding he unites with .

----- Edmund Burke.

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