保守主義の哲学---ワンフレーズ「脱原発」?小泉純一郎元首相の「超無責任」! [政治]

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 最近繰り広げられている小泉純一郎元首相(以下、敬称略す。)の「脱原発」発言の「無責任さ」には呆れかえるばかりだが、それが許容の限度を超えてきたので、ここで敢えて、苦言を申し上げたい。

 まず、小泉純一郎の「放射性廃棄物の最終処分場もないのに原発を進めるのは無責任だ」(H251001名古屋市での公演で)とは、フランスやドイツを拠点として世界中で活動する「環境原理主義者」の主張のコピーであるから、小泉純一郎は完全に左翼・極左の「無責任」嘘宣伝屋に堕したとすべきであろう。

 例えば、ダニエル・コーン=ベンディッド(=元学生運動のリーダーでドイツ国/フランス国で環境原理主義の急先鋒として活動する極左政治家)はこう主張している。

 「放射性廃棄物の(地層処分などの)問題が解決できるなら、原子力を敵視しない。」

 この左翼言語を翻訳すれば、

 「放射性物質の地層処分などの解決方法は、我われ《環境原理主義者》が決して認めない(=解決方法が決まらない)から、我われは原子力を常に敵視するし、認めない!」

 という意味の《詭弁》にすぎない。

 〔=ブログ作成者〕が「超無責任である」と言っているのは、小泉純一郎が原発問題において、左翼・極左思想に転向したことを言っているのではない。

 小泉純一郎が、超無責任なのは、科学技術的な根拠を何も示さずに、相も変らぬ得意の《ワンフレーズ・ポリティックス》によって、あたかも太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーで原子力発電を代替できるかの如き妄想を抱かせて、安倍内閣と日本国民を〈没落・凋落の未来〉へと煽動(誘導)しようとする手法(姿)が、《悪質な霊感商法の花瓶売り師》と何ら変わるところがないからである。

 もし、小泉純一郎が、自身の「脱原発」発言について、「左翼・極左の宣伝屋」、「ワンフレーズの超無責任男」、「霊感商法の花瓶売り師」などと呼ばれる筋合いなどないと言うならば、今後の「脱原発」発言の際には、以下の点について、日本国民の前で《具体的で現実的可能な論理》を展開すべきであろう。

 そうでない場合には、日本国民は、小泉純一郎の「脱原発」論(原発の再生可能エネルギーによる代替論)を何の根拠もない国民騙しの「嘘宣伝」とみなし以後一切信じない、聞く耳もたぬ態度をとるべきである。なぜならエネルギー政策の失敗のツケは必ず国民自身が払うことになるからである。

 《小泉純一郎が「脱原発」論において、最低限国民に提示すべき事項》

 、(政府と)《原子力規制委員会》が現在停止させている全国50基の原発(あるいは建設中含め54基の原発)の発電定格出力を、《単純に》太陽光発電や風力発電に置き換えた場合に、どんな施設や設備がどの程度の規模で必要となるかについての概略的な計算根拠と、それらの計算結果が、日本国の地理的・気候(気象)的・政治的環境等の下で、実現可能性があるか否かの目安(信憑性)を示すべき。

 これらについて自らは一切語らずに「政府が脱原発の方針を決定してから、みんなで智恵を出せば再生エネルギーでやっていける!」では、あまりに無責任に過ぎるであろう。

 このような計算は、様々な研究機関で行われており、結論は見えているはずではないか?

 だから、安倍内閣に脱原発の方針を先に示せ!と既成事実づくりを煽り、再生可能エネルギーの代替案は「その後に」みんなで検討すればよいと言っているのであろうが、これでは日本国民に「無根拠(俺の直感・霊感)に莫大なカネを賭けろ!」と言っているようなもので、無責任極まりないのではないか。

 2011311日の震災による福島第一原発事故の後、ドイツ国民はヒステリー(パニック)状態の中、脱原発に反対できる雰囲気すらなく「脱原発」を国家の方針としてしまった(当時の与党・自由民主党のシェフラー議員)。

 また、ドイツ国の再生可能エネルギー法の下での電気料金は、その「全量固定価格買取り制度」が原因となって高騰し続けている。

 「・・・今後は国民の10人に1人が電気代を支払えなくなるとの試算もある。8月の世論調査では、脱原発による電気代上昇に6割が反対し、《(脱原発の)熱狂が冷めた》」(独誌シュテルン)とも分析された」(毎日新聞 20131018日付)。

 この電気料金上昇の問題は、ドイツの新聞や研究機関の報告などから、明白な事実である。

 小泉純一郎は、「脱原発」した場合に、日本国の再生可能エネルギー法の下では日本国民(一般家庭・企業等)の電気料金が、ドイツの経験のように高騰し続けることはなく、原発推進の場合より脱原発の場合の方が、電気料金がかなり高額になることもない、と説明できるのか?

 ちなみに、日本国の再生可能エネルギー法での「電気買取り価格」は欧米各国の「2倍近い高額料金」に設定されているのである。

 、「脱原発」を決定したドイツは、既存の原発は稼働させているが、それでも電気をフランス(発電電力量比率:原発約80%)やチェコ(発電電力量比率:原発約25%)から電気を《購入》している。

 【第223-1-6】欧州の電力輸出入の状況(フランスの例2008年)

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  出典)エネルギー白書2011年(数値は2008年の値) 

 これは、欧州各国の間に送電線網が整備されているために可能なのであるが、ドイツは2020年に「脱原発」して再生可能エネルギーで原発電力分を賄うために、送電線網の整備を計画しているが、遅々として進んでいない。

 そのドイツの状況について、竹内 純子 国際環境経済研究所理事・主席研究員の論文から引用させて頂く。

  竹内 純子 曰く、

 「ドイツでは、風況の良い北海沿岸部に風力発電が集中的に立地しており、電力の生産地〔北部〕と消費地〔南部〕を結ぶ送電線整備が喫緊の課題となっている。

 政府は、”Power Grid Expansion Act”〔注:筆者訳。正式名称はEnergieleitungsausbaugesetz・・・〕を制定して、手続きの簡素化を図っている。進捗状況(201254日時点)が下記の図だ。

 しかしながら、送電線等の電力設備の建設はそれほど簡単に進むものではない。

 特に電磁波による健康被害を懸念する学説が出てからというもの、地元の反対が強まり、その用地交渉にも非常に長い時間を要するようになっている。

 〔Energieleitungsausbaugesetz〕の下で進められている24プロジェクトのうち15〔下記地図のうち、黒字に白抜きの数字で番号を表示した部分〕で遅延が生じているという。

 国内の送電線増設計画が進まないために、風力発電所で発電された電力が近隣のポーランドやチェコに計画外に流入する事態がしばしばおこり、火力発電機の出力を下げるなど緊急対応を強いられている東欧諸国の電力会社4社から、本年3月〔ドイツ南北の送電線増強工事が終わるまでは、ドイツ北部に再生可能エネルギー発電設備を建設すべきではない〕という強いメッセージが出されたという。

 なお、日本における風力発電の適地は、風況および大規模な土地確保の可能性から考えて北海道と東北の一部に限定される。

 このエリアに風力発電を導入・拡大した場合、地内の送電網整備だけで3,100億円程度、北海道と本州を結ぶ北本連系線等基幹送電網の整備に11,700億円程度が必要と試算されている。

 政府のコスト等検証委員会は当該費用を含めずに発電単価を比較しているが、将来必要とされる国民負担に大きな違いを生じさせるものであり、正確かつ公平・公正な情報提供を行うべきだ。」(竹内 純子 国際環境経済研究所理事・主席研究員「ドイツのエネルギー体制はすばらしい」のか? 再エネ振興、問題点の再整理」、「ドイツの電力事情―理想像か虚像か」)

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  出典)Bundesnetzagentur (ドイツ連邦ネットワーク規制庁)

 言うまでもなく、日本国は周囲を海で囲まれた島国であり、地理的にも政治的にも送電線網を敷設できるような近隣国はない。

 また、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーは、気候(気象)条件に左右されることと発電した大量の電力を蓄電する技術がない(=発電した時に売ることしかできない)ため、国民生活の電力の需要曲線に忠実な安定供給ができないという重大な欠陥がある。

 だから、現在の日本国において、自然の気まぐれ任せの再生可能エネルギーの発電が1%程度しか占めていないのである。

 中川八洋 筑波大学名誉教授曰く、

 そもそも、(朝日新聞のように)<ドイツを模倣せよ>(という)ならば、ドイツの狡猾な二枚舌を模倣せよということにもなる。

 <自国の原発発電は(危険だから)しないが、フランス輸入の原発発電(フランス国民の危険)は大いに大歓迎>が、ドイツの実際の電力策である。

 ドイツに学べば、<日本は中国の原発発電を東シナ海を越えて送電してもらえ>となろう。

 むろん、このような送電線はつくれない。仮に万が一つくれえたとすれば、日本は中国の属国とならざるを得ない」(中川八洋『脱原発のウソと犯罪』、日新報道、185頁、( )内:〔=ブログ作成者〕の補足)

 小泉純一郎は「脱原発」を声高に唱えるならば、最低限、上に列挙したような「再生可能エネルギーの持つ問題点(課題)」についての解決策を日本国民の前で明確に説明すべきである。

 それを一切せずに、安倍内閣に対して「脱原発の方針決定の既成事実づくり」を煽り立てている小泉純一郎とは、その結果としての安倍内閣をエネルギー政策の(目に見える)失敗による「倒閣」を待ち望んでいる(=目的としている)左翼・極左政党人に見えてくる。

 もし、小泉純一郎に「恥」の心があるならば、このような(誰にでも解る)無責任な「脱原発」発言は、今後は慎まれる方が貴方にとって得策であると進言しておきたい。

 、最後に、小泉純一郎の「最終処分場がないのに原発推進を言うのは無責任」という論理は、現実を逆さに転倒した超無責任の論理であり意味をなしていない。

 なぜなら、日本国には過去の原子力発電の実績によって発生した高レベル放射性廃棄物(=ガラス固化体)等が多く冷却保管されて(最終処分を待って)いるのであるから、日本国政府・国民・電気事業者等は「脱原発」論などとは全く無関係に、これら既存の(=過去に発生した)放射性廃棄物の最終処分場を必ず決定せねばならない《義務しかないからである。

 日本国政府・国民・電気事業者等は、過去の原子力発電によって、経済の高度成長など多くの恩恵(利益)を授かってきたおかげで今(現在)があるのだから、現存する放射性廃棄物処分については、真剣に、国家総力を挙げて、最終処分場決定に取り組まねばならない。

 そして、最終処分場を決定できれば、さらなる原発推進も可能になるというのが真の道筋ではないか。

 この既存の(高レベル)放射性廃棄物の最終処分の《不可避性》について、一切触れずに、「最終処分場が(現時点で)決定していない」から「原発推進を唱える」のは「無責任である」などという馬鹿げた論理がどこにあろうか。

 小泉純一郎の論理によれば、既存の(高レベル)放射性廃棄物は、(現時点で)最終処分場が決まっていないから、処分せずに放っておけばよい。そして即、脱原発して再生可能エネルギーに移行せよ!と言っているのと同値である。

 これを「超無責任」と言わずして何であろうか。

 小泉純一郎は、今後「脱原発」を論ずる場合、最低限度、上に列記したような問題点についてはクリアできるという見込み(現実的根拠)を同時に示さないならば、その愚劣な「脱原発」論だけでなく、小泉自身の人格そのものに対する信用が失われる事態になりかねないだろう、と進言申し上げておく。

平成25年11月13日(水)03時20分

兵庫県神戸市にて記す。

エドマンド・バークを信奉する保守主義者